神戸市須磨区に位置する名谷は、海と山に囲まれ、歴史や文学を語る史跡や名所が至る所に佇み、古くから風光明媚な住み良い土地柄として知られている。
昭和40年代頃からニュータウンとして賑わいを見せていたが、他地域のニュータウンと同様に、平成６年頃から人口が減少し、現在も少子高齢化の傾向にある。
自然豊かな住み良いこの街に、若者や子育て世代に戻ってきたもらいたい。
この街で育った子供たちが、この街で過ごした豊かな時間を思い出し、大人になって帰ってきたくなる。そんな場所を目指した。
里で育つ、里を育てる、ふる里への想いを育てる、そんな意味を込めて「里育（さといく）」という言葉を造り、これをプロジェクトコンセプトとした。
「里育」のきっかけとなり、街の人々が長く付き合える図書館となるように計画した。
街の風景を切り取り、ランドスケープをデザインするように家具や什器を大きな塊として配置。神戸の街を連想させるよう空間に連続性を持たせた。
まず、木材を多用することで館内は木の香りや温かさが感じられる空間となっている。嗅覚と記憶のつながりは深く、匂いがそれに結びつく記憶や情動を呼び起こすことは誰しもが経験のあることだと思う。
この図書館の匂いやここで過ごした日々が人々の記憶に残り、何度も足を運びたくなる場所になればと願っている。

Location / Hyogo Japan
Complete / 2021.
Floor area /1298㎡
Creative direction / AIM CREATE CO.,LTD Mitsuro Mase
Design direction / BLURRY
Graphic sign/ Yousuke Yamauchi
木材協力：share Woods
Photo/ Takeshi Asano